炭坑の子供たち(2)
父兄を学校に呼んで、演劇なんかを見せる、学芸会と言うのがあったが

当時は、今みたいに

「どうして、うちの子を主役にしなかった」

と、言って来る、やかましい親もいなかった。

「今年は桃太郎をやるが、誰か、桃太郎をやりたい者はおるか?」

と、先生が聞いても、誰1人手を上げない。

それでも、配役を決め始めると

先を争って、セリフのない木や花になりたがり

中でも、1番人気があったのは、ただ座っているだけでいい石であった。

元気のいいのが、石や木などのいい役を取ってしまうので

どうしても、内気で1番おとなしい子が、主役の桃太郎をやる羽目になり

次におとなしいのが、キジや猿や犬になって、脇を固める。

そして、勉強が出来なくとも、将来大工になりたい子が

大道具の係となって、生き生きと動き回っていた。
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