shining☆moon‐私の王子様‐


徐々に近づく本田くんの顔。
細くなる目からは色っぽさが増して、私の気持ちを揺るがす。
こんなの、私じゃない。
私はフレンとしかそう想えない。


キス…?


実際私はキスの経験がない。
多分…。
したとしても、幼い頃。
だからどんな感じかはあやふや。


「…やだっ…フレン…」


私は涙目でこう訴えた。
本田くんの目は丸くなり不機嫌そうな顔になる。


「だから、フレンって誰だよ」

「…んやっ」

「質問に答えろ」


ユリアは黙る。

どう答えればいいの?
私にとってフレンは何?
ただのパートナー?
幼なじみ?

フレンにとって私は何……?


「…黙るな」


私はいつもそうだ。
自分の気持ちを隠そうと、人と比べて話題をそらす。


「…キスすんぞ」


キス?
私は本田くんとなんかキスしたくない。
その前にキスは好きな人にする行為。
お互いに愛し合い体温を確かめるように唇を重ね、体の一部が触れ合うもの。
だから本田くんとはしたくない。
じゃあ誰としたいの?


「おい、反応しろ」



決まってるじゃん。
好きな人だよ。
私にとって大切な人で失いたくない人。


そうだよ。

私が失いたくない人。
大切な人。
大好きな人。
心から愛せる人。


フレン。
あなただけだよ。




「…おい。フレンって……」


ユリアは優しく微笑む。
まるで愛しい人を見つめる時のように。



「…私の大切な人。失いたくない人だよ」




その表情に本田くんは絶句する。
曇りのない目。
ただ一人を愛せる、好きになった人を見つめるような目。


本田くんはサッとアゴにあった手を離しユリアから離れた。


「本田く……」

「今回は見逃す」

「今回はって…」

「…血に飢(う)えたヴィンセント様が現れる時には必ずしとめるからな」


そう言い残し昨日の夜ルイスとともに消えたヴィンセントみたいに本田くんも消えた。


私は何を言ってしまったんだろう。


いまだになって自分の言っていた事に後悔があった。


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