shining☆moon‐私の王子様‐
ヴィンセントはこれを利用しようとしているのか…?
フレンはうなだれる。
「フレン…?どうかしたの?」
ユリアがフレンの顔を除き込んだ。
「別に…」
だが、フレンはまた海を眺めるだけ。
『大切な人の前で哀れに死ぬんだな』
ヴィンセントの言葉が気にかかる。
大切な人。
ヴィンセントは俺にとって大切な人は誰を示しているのだろう。
チラッとユリアを見る。
ドキッ…―
ユリアと目が合う。
少し潤んだ瞳。
潮風でなびく栗色の髪。
張りのある桜色の唇。
全てが俺の気持ちを揺るがす。
大切な人。
一度だけ自分で確信したことがあった。
だけどこの想いは許される事なのか。
セヴィア王国の姫と俺じゃあ、不釣り合い。
そう思う。
…ユリアは。
ユリアは大切な人はいるのだろうか。
「ユリア…」
「ん?」
ユリアは俺の横にきてニコニコと笑いながら俺を見つめる。
「ユリアにとって、大切な人って誰?」
「へ…?」
ユリアは固まり、動かなくなる。
少し頬がピンク色になり、もじもじする。
「えっと…その…」
「ん?」
どんどん赤くなるユリアの顔。
その反応が可愛くて、面白くて……愛しい。
少し微笑みながらユリアの頬をそっと触る。
「フレン…?…ひにゃっ!!」
頬を触った手でユリアの頬をくいっと横に伸ばす。
「いはいほ~(痛いよ)」
「ははっ、変なの」
「ふへんはひゃっへふんへほ~(フレンがやってるんでしょ)」
怒ってる顔、全然怖くねぇし。
手を離してやると「ばかばかばかばか」と言われユリアはレオがいる所へプンプンしながら行った。
なんかちょっと元気でた。
ユリアといると心が落ち着いて、安らぐ。
ずっと一緒にいたい、傍に居たい。
離れたくない。
こんな想いがある。
俺にとってユリアは大切な存在。
失いたくない人。
じゃあユリアにとって俺はどんな存在?