shining☆moon‐私の王子様‐


~~ユリア.said~~


「はぁっはぁっはぁー…」

息を切らして走った。
ここ何処だろうって思うほど広い客船。
廊下はずらっと変わらない壁にじゅうたん。
ゴージャスな赤いカーペットには金色の紋様がある。
私はそこを走っていたんだ。

フレンを追って。


『好きじゃねぇって言ってんだろ!!!』


私の心はひどく傷ついた。
深くついた傷は私の痛みを増していく。
痛いよ。
辛いよ。

苦しいよ…。



いっぱい走ったからか、肌が焼けたみたいに痛い。
心臓の音も、まるでボールが地面について跳ね上がるよう。


「…フレン」


今まで私にくれた言葉はどんな想いがあった?
私はよく覚えていないけど、よくよみがえる過去は、現実なんだよね?
私、期待しちゃうよ?

フレンがくれた、

『ばか』
『可愛い』
『俺が守るから』
『好きだよ』
『結婚しようね』
『愛してる』


私にとって温かい言葉を。



温かい水が私の頬をまた下りていく。
その水も重さを変えて、どんどん重くなり、私の目からずり落ちていく。


フレンに会いたい。
でも、会ったって心が痛む。
傷つく。
ただ、片思いの人が好きな人にアピールしてるだけだと世間からはそう見えるだけ。

怖い。
怖いよ。
でも、フレンの方がもっと怖いはず。
死を巡る戦いを目の当たりにするのだから。
だから私はフレンを支えなけばならない。
守らなきゃならない。



大好きなフレンを。



フレンが私を好きじゃなくても、

視界に入っていなくても、


『好き』の気持ちは変わらない。


フレンを好きになる理由はいらない。


ただただ、フレンのことが好きなだけ。






たとえ、フレンが私のことが嫌いだとしても。





ユリアは廊下の一番奥まで走ったみたいで、目の前に大きな扉が出現した。
ユリアは迷わず入って行った。


まるで、誰かがユリアを誘うかのように。

< 116 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop