shining☆moon‐私の王子様‐
~~ユリア.said~~
「はぁっはぁっはぁー…」
息を切らして走った。
ここ何処だろうって思うほど広い客船。
廊下はずらっと変わらない壁にじゅうたん。
ゴージャスな赤いカーペットには金色の紋様がある。
私はそこを走っていたんだ。
フレンを追って。
『好きじゃねぇって言ってんだろ!!!』
私の心はひどく傷ついた。
深くついた傷は私の痛みを増していく。
痛いよ。
辛いよ。
苦しいよ…。
いっぱい走ったからか、肌が焼けたみたいに痛い。
心臓の音も、まるでボールが地面について跳ね上がるよう。
「…フレン」
今まで私にくれた言葉はどんな想いがあった?
私はよく覚えていないけど、よくよみがえる過去は、現実なんだよね?
私、期待しちゃうよ?
フレンがくれた、
『ばか』
『可愛い』
『俺が守るから』
『好きだよ』
『結婚しようね』
『愛してる』
私にとって温かい言葉を。
温かい水が私の頬をまた下りていく。
その水も重さを変えて、どんどん重くなり、私の目からずり落ちていく。
フレンに会いたい。
でも、会ったって心が痛む。
傷つく。
ただ、片思いの人が好きな人にアピールしてるだけだと世間からはそう見えるだけ。
怖い。
怖いよ。
でも、フレンの方がもっと怖いはず。
死を巡る戦いを目の当たりにするのだから。
だから私はフレンを支えなけばならない。
守らなきゃならない。
大好きなフレンを。
フレンが私を好きじゃなくても、
視界に入っていなくても、
『好き』の気持ちは変わらない。
フレンを好きになる理由はいらない。
ただただ、フレンのことが好きなだけ。
たとえ、フレンが私のことが嫌いだとしても。
ユリアは廊下の一番奥まで走ったみたいで、目の前に大きな扉が出現した。
ユリアは迷わず入って行った。
まるで、誰かがユリアを誘うかのように。