shining☆moon‐私の王子様‐


「ったく、うっせーな」

「う…ぇ…」


涙でぼやけて見えない。
でも誰か居ることだけはわかった。
誰だろう…。
低い声だから男の人かな。
この声はフレンでもないし、レオでもない。

声の本人が私に近寄り、目の前で座る。


「…すげー腫れてんな。目…」

ヒヤリとした男の手が目元に触れた。


「…ん……」


大きくて、長い指。
まるでフレンみたいだ。


…フレン?



ぽた…―


涙が1つ、2つ頬に流れて男と指の上を流れた。

冷たい手。
手が冷たいと、心は温かいって言うよね。
じゃあ…フレンは?
とても温かい手をしてる。
心が冷たいって事かな。
いや、違うよ。
フレンは優しくて、強くて、心配性で、かっこよくて……。



…また、フレンの事ばっか。


もう…フレンが頭から離れないよ…。



「…泣くな」

「誰…?」

「本田です」

「本田くんっ?」


本田だったんだ…。
なんでここに?
ここには部屋もないし、しかも廊下の最終地点だよ?
だからめったに人も通らないし…。


ユリアは涙を拭いて本田くんを見た。


「どうしてここに居るの?」

「凄い声がしたからつい…」

「凄い声…?」

「お前が泣き叫んでいたからじゃねぇ?」


私泣き叫んでた?
あぁ、さっきのか。
なんかもう、何がなんだかわからなくなってきたよ。


「彼氏になんか言われたか」

「かっ彼氏じゃないよっ!…でも」


本田くんは私を真剣に見た。
私は下を向き自分の口から言いたくなかったけど、言ってしまった。


「私、嫌われちゃったんだよね…。あはは、バカだよね私…」


何笑っているんだろう。
全然笑えないのに。

本田くんは笑う私を無視して、怖い表情を見せた。

「バカじゃねぇ?お前。嫌われたから、笑うんか?…諦めんなよ…」

「本田くん…」


優しいんだね。
本田くんは。
だけどね本田くん、私今何をすればいいかわからないの。
そうだ…。
夜には部屋に戻らないとだし。

「…俺の部屋、来いよ」


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