shining☆moon‐私の王子様‐
フレンはそのまま、枕に顔をふせて、何かモソモソ言った。
「…何?何言ってるかわからない」
僕はフレンに近づく。
そして女じゃないけど、フレンをそっと抱きしめ、頭を撫でた。
するとフレンはめったに見せない、弱々しい泣き顔を見せた。
そんな大声を上げて泣いていないが、泣いている事はわかる。
鼻をすする音を出し涙を拭く、その仕草が今までにない新しいフレンだった。
こんなフレンを生み出せるのはどんなに探したとしてもユリアしかいないだろう。
「ユリアと何があったの?」
「…キス…」
「キス?」
「キスされた…」
「キスされた!?」
フレンは小さく頷いた。
ユリアとフレンがキス…?
なんか、心にナイフが刺さった気がする。
ずきずきして、痛い。
今、静まり返ったこの場所で鼓動が聞こえてしまうんじゃないかってくらい、僕の胸は高鳴る。
緊張してとか、興奮してとか、そんなんじゃない。
心の中の一部分が曇り、そこで巨大な稲妻が起こっている。
なんとなく切なくて、むなしくて、苦しくて、もの凄くフレンが憎い、って思う自分が僕の心の中で暴れている。
いわゆる、嫉妬だ。
いつもフレンばっかりで、努力無しで周りの人たちの心を奪い、魅了するフレンがうらやましかった。
こんなにも僕は努力してるのに。
頑張っているのに。
それなのに、誰一人僕を見てくれない。
見るのはフレンだけ。
正直、憎くて憎くてしょうがなかった。
だけど今、弱々しく、いつも見ていたフレンとは全く違うフレンがいた。
泣いて泣いて泣いて、泣きまくったフレンが。
泣くほど好きだったユリアにキスされて、そこまで想い詰めていたフレンを見て、自然と言葉を発していた。
「…フレン、ユリアのところに行きなよ」
僕はフレンを応援しようと思う。