shining☆moon‐私の王子様‐
~~ユリア.said~~
潮風にあおられながら、船の生活はあと数時間で終了間近。
大体、いや結構実戦に向けての魔法を使えるようになったし、剣も自由自在に使えるようになった。
だから、私は負けない。
この特訓は試験のために行ったものじゃない。
ゾルヴァーナ王国の襲撃に備えたもの。
そして、ヴィンセントからフレンを守るため。
私にできる事なら私は全力を尽くしてヴィンセントやゾルヴァーナ王国の兵士達に立ち向かいたい。
海を見ながらそう思っていた。
ドン…―
「あらっ!ごめんなさいっ…!」
長い髪をした綺麗な女性とぶつかってしまった。
多分この船の管理をしてる人に違いない。
波乗りのセーラー服を着ているから、この船の制服。
つまり、この船の人。
「大丈夫ですよ。お怪我はありませんか?」
「はい」
キラキラした顔で笑い、女性は走って行った。
長い髪…。
『ユリア!』
頭の中で連想するのは私と仲良くしていた女の子。
「ルイス…」
無事なのかな。
怪我はないかな。
ちゃんと生きてるかな。
不安がよぎる。
会いたい。
会いたくて会いたくて、しょうがない。
影の島に着いたら会えるかな。
寂しいよ…。
「…ルイス……」
「ルイスは大丈夫だ」
「え…?」
隣に居たのはフレン。
風になびく赤い髪が綺麗に光る。
優しい笑みと共にフレンの大きな温かい手が私の頬を触る。
「…大丈夫。ルイスは生きてる。絶対に会えるから…」
「…うん」
優しいフレンの言葉にドキドキする胸を押さえ、ただルイスを考えていた。
すると突然船は大きく揺れ、乗客に被害が起こった。
「何が起こった?!」
「ねぇ見てフレン!あの船…!」
幽霊船のような船とこの客船がぶつかっていた。
「…ヴィンセント」
険しい顔をしたフレンが見る先は不気味に笑ったヴィンセントの姿。
とうとう、来てしまった。
この時が。
血にまみれる戦いが。
任命試験なんかに参加しなければ。
リダアースと話さなければ。
どんなに良かっただろう。
そうすれば色々な人が傷つかなくてすんだのに。
…死ななくてすんだんだ……。