shining☆moon‐私の王子様‐
ドスドスシュバッ…―
オクターフィルゾンで創られた針たちがヴィンセントに飛んでいき、鈍い音をたてなながらホコリと煙を沸き立たせた。
やったかな…!?
少しウキウキしていた。
でも、ヴィンセントはそんな簡単には倒れる相手じゃなかった。
「…っ!?」
煙が晴れたとたん、ヴィンセントの前にはゾルヴァーナ王国の兵士、二人が数本の針に刺されながら必死に立っていた。
「…っあ…ぁ…や…」
兵士達の身体に刺さった針に赤いものが流れ、下へと垂れていく。
血だ。
口からも流れ出る。
そして…、床に倒れた。
倒れるのと同時に飛び散る大量の赤黒い血。
「無様だ」
ヴィンセントは涼しい顔をして兵士たちにいい払った。
「…許さない」
「ユリア、落ち着けっ…、あれはヴィンセントの魔法で…」
「…魔法?」
ヴィンセントの魔法?
じゃあ、あの兵士たちは自分たちの意志でヴィンセントを守ったんじゃないの……?
……信じられない…。
ヴィンセントは自分の身を守るために味方を盾にしたってこと……?
ヴィンセントは目の前の血まみれの兵士を眺め、足でつついていた。
そして……。
バッシャン…―
ビチャビチャ…―
ちゃぽん…―
兵士を海に放り投げた。
水面に浮かんだのは赤黒い血だけ。
「…なんてことを…」
「ユリア…、落ち着け…」
フレンは私を抱き寄せた。
私の身体は小刻みに震える。
初めて目の前で人の死を目撃した。
この人たちの一生を目の当たりに。
それに、自分で死にたくって死んでしまったのではなく、強制的に死におちいってしまった。
……こんなの…悲しすぎるよ…。
「…う……ぅ…」
「怖かったな…、悲しいよな…」
優しいフレンの言葉だけが唯一私の光。
だけど私の心は悲しみでいっぱいだった。