shining☆moon‐私の王子様‐
やがて兵士の叫び声はおさまり、俺たちを包んでいた黒いドームも消えて辺りは明るくなった。
目の前に倒れる兵士。
バックには積み重なった兵士達。
「終わったねぇ…」
「…まだ、終わってない」
「え…?」
「これはただの始まりにしか過ぎない。まだヴィンセントがいる限りは…」
ぎゅうっ…―
ユリアが抱きついてきた。
俺の鼓動はドキドキと加速していく。
俺はユリアの頭をなでた。
「よしよし。ユリアもよく頑張ったな…」
「フレン、それ私じゃないよ。私ここにいるよ」
目の前に突っ立って俺をみるユリア。
ってことは…。
俺は誰を抱きしめ、誰の頭を撫でているんだ!?
恐る恐る、目だけで下を見た。
そしたら……。
「ハァロォ……♪」
「…」
……………。
なんでレオなんだよっ!!
レオは目を輝かせて俺を見た。
キモい……。
なんかいちいちレオに言葉を返すのが面倒くさくなったから俺とユリアは影の島に着地した。
「待ってよ!!」
後ろで叫ぶレオ。
俺達は構わず足を進めて行った。
……初代エルランドの眠る島…。
考えただけで背筋が寒くなる。
以前にヴィンセントととのあの事件当時よりも、不気味さが増していて、雑草が大量に生えていて、大木の根が地面に浮き上がりゴツゴツした足取りになる。
「なんてことだ……」
「…」
レオは顔を青ざめて言った。
ユリアは口を両手でふさぎ、目を見開く。
そうなるのもおかしくない。
所々雑草が生えていないと思えば、そこには人の形をした黒い影が。
昔、影の島で起こったゾルヴァーナ王国の空襲で焼き殺された初代エルランドの魔同士達の灰跡だ。
俺はそんなものには目を向けずに前へ進む。
「……フレン…あ、あの…っ」
「こんなもので怖がってちゃ、戦えないだろ」
俺は冷たく言い払った。
ユリアの表情を見ないで。
今の俺の言葉できっとユリアは傷ついたと思う。
わかってる。
わかってるけど。
今はそれどころじゃないんだ。
死んだ人の跡なんて俺はもう何回も見た。
それで何回も苦しんだ。
初めて見た人の死は、涙が枯れるまで泣いた。
ユリアの気持ちは凄いわかる。
けど今は、戦うことに集中しないと。
俺達は雑草をかき分け前へ進んで行った。