shining☆moon‐私の王子様‐
血の匂い
~~ユリア.said~~
ササー…サク…―
雑草が風に吹かれて音を立てる。
もう冬だからだろうか。
吹く風が冷たく、吹いていなくても寒い。
「あ~、寒いねぇ…」
ポツリと呟くと、私は両手を口の前にもっていき、はぁっと息を吐いた。
まぁ、手だけが温まってもしょうがないけどね。
特に足が寒い。
私は短いスカートにブーツだから太ももが寒くて…、感覚がなくなる。
「なんかもう冬だなぁ」
後ろからレオが言う。
私とレオは寒くて悲鳴をピーピー言ってるのにフレンは一言も寒い発言を言わなかった。
「お前らうるさい。敵にバレるだろ…!」
ただこれだけ。
厳しく私とレオを叱る。
「「はぁーい」」
私はやる気無さそうにレオと返事したあとに足元の異様な感覚に気づいた。
「!?」
ドロドロしていて、下に足が沈んでいく。
とっさに足元を見たら、黒に近い灰色のドブの上に私だけ立っていた。
「何…こ…」
「それは水銀だっ!!」
フレンが眉間にシワを寄せ、大声を張り上げた。
そしてフレンは私の腕を引き、抱きしめた。
――――!
腕の中は温かくて、何もかも忘れてしまいそう、そんな気がする。
私は抱きしめるフレンに寄りかかり、自分からフレンにくっついた。
「…ユリア……」
「……ん…」
あ……。
久しぶりにフレンに抱きついたなぁ。
あれ?違うか。
最近も抱きしめられたこともあったか。
でも、どうしてだろう。
フレンの体温、鼓動、身体、全てが久しぶりに感じてしょうがない。
このまま永久に離れなきゃいいのに。
誰もいない所で二人、暮らせたらいいのに。
だけど私がどんなに願っても、運命が勝ってしまって私の願いは儚く終わってしまうんだよね。
「…終わらないよ」
「…え……?」
フレンは優しい眼差しを私に向けた。
これも懐かしい。
「…俺はユリアの傍にいつまでも、いるからね」
「…っ……」
温かい言葉。
私を溶かしてしまうような……熱くて優しい言葉に聞こえる。
そして私の目尻は熱くなる。
私は少し潤んだ目でフレンを見つめた。