shining☆moon‐私の王子様‐
血を飲み干された人。
良く見るとさっき船上で戦ったゾルヴァーナ王国の兵士の服に良く似ていた。
ううん、ゾルヴァーナ王国の兵士の服そのものだった。
私はあまりの恐ろしさに呼吸する事を忘れていた。
どうしてなの!?
ヴィンセントの仲間でしょ!?
……どうして仲間を。
私は船上での出来事を思い出す。
ヴィンセントは私からの攻撃を兵士を無理矢理盾にしてから……海に捨てた。
奪った。
ヴィンセントは仲間の命を奪った。
命だけじゃない。
その人の未来、人生、大切な思い出も全部…。
私の身体はプルプルと震え上がった。
その人の家族だっていたはず。
きっと今頃、その人の奥さん、子供、知人は帰りを待っている。
信じてる。
……きっと生きて帰ってくるって。
なのになのに……。
……もう、帰って来れない。
この地上にいない。
この世にいない。
もう…帰って来ない。
これを聞いた家族はどうなる?
大切な人は?
これから独りぼっちなの…?
私の頭にフレンが浮かぶ。
私にとって大切なのはフレン。
じゃあ……。
…フレンが二度と私の元へ帰ってこなくなったら……?
ぽろッ…―
溜まっていた大粒の涙が頬を流れた。
フレンが私の元へ帰ってこない事を想像した事がなかった。
フレンが私の傍に居るのは普通になっていて、居ないことが不自然なぐらいだった。
だからフレンは………。
フレンは………。
私は横を見た。
いつもするほんのり香るジャスミン。
……だけど今はしない。
一気に私は不安になった。
……フレンがいない………。
フレン……?
フレン…?
どこ…………?
「…ユリア……?……どうしたの…?」
「……いない…、フレンがぁ……」
私の視界は涙でぼやける。
何もかもが曇る。
フレン………ッ…。
「…んで、僕じゃだめなんだよ……!!」
グイ…―
私の身体は誰かの力によって引っ張られ倒れていく。
そして柔らかいものに締め付けられる。
フレン…?
温かい。
柔らかい。
でも……。
安心できない……。
「……フレン…?」
涙声でしゃべる。
「…そうだよ……」
わかってる。
フレンじゃないってことぐらい。
わかってるけど。
だけど……。
今の私は誰でもいいから。
……ただただ温もりを求めていたいんだ…。