shining☆moon‐私の王子様‐


「…はぁ」

ため息を1つ、溢してしまう。

「どうしたんじゃ、フレン」

「え、いえ…何も」

「そうか…」

「あ、あははは…」


俺は笑ってごまかす。
やばいやばい。
俺は何を思い出しているんだ。
過去のことなんてどうでもいい。
そうだ……。
今は…今は………。


「ユリア」


クロードがこの場の空気を壊すようにポロッと呟いた。
その言葉に俺の身体は敏感に反応した。

「…ユリア様はどうしたのじゃ」

リダアースが不安そうに俺に問いかけた。
俺は黙り込み下を向いた。
…言えない。
言ったところで俺が攻められるだけで…ただみんなが混乱して探すだけ。
胸がぎゅっと誰かに握られているように苦しくなる。

「…フレン、ユリア様は」

「…ユリア…は……」


言葉が喉まで来ているのに、なかなか言い出せない。
だけど……。

【フレン…】

―――――!!!

頭の中でユリアの透き通った声が響いた。
この声はユリアの心の声。
今ここで聞こえるってことは……近くに居るってことか!?


「…フレン、話してくれ」

「はい」

俺はユリアがまだ生きていることを確認できたから速く救出したいと思い、手短に話した。

するとリダアースは微笑みあごをさすった。

「ホッホッホ、レオも大人になったもんだ」

「笑ってる場合じゃないでしょ…」

俺とクロードは呆れた。
すると、この空気を固まらせるようにこの静かな薄暗い林に人の話し声が聞こえた。
それは俺たちじゃない誰かだ。

「…誰だ」

「……し…」

俺たちは身構えた。
何処から話し声が聞こえるのか四方八方を見渡した。
クロードの後ろに連なるセヴィアの軍隊は準備を始める。

「行くぞ」

クロードの掛け声でセヴィアの軍隊は動き始める。
クロードは声の方向がわかったらしく、林を直進していく。
俺と本田をおぶるリダアースは木を移りながら近づいて行った。


「……っ!…」

「…どうかしたのか?」

「いえ……何も…」


ますます血の匂いが濃くなっていく。
まるで鉄を間近で匂いを嗅いでいるような…、そんな匂い。

まぁそれはさて置き……。

木を移っていたら、目の前に何もなくただ一面に平地があり、雑草すら生えていないホールのように広間があった。


「……ヴィンセント」


そこにはヴィンセントの姿。
そして血まみれのゾルヴァーナの兵士がいた。


< 160 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop