shining☆moon‐私の王子様‐
ヴィンセントは誰かと話していた。
誰なんだ…?
一体ヴィンセントは誰と話して―――
「お味はいかがでしたか?」
するとヴィンセントの後ろの木の陰から、綺麗な長い髪を1つに束ねた……、ルイスがいた。
「…ルイス……」
俺は久しぶりにルイスを見て少し切ないぐらいの声で呟いた。
空には星が散らばる。
ちょうどいい程度の月明かりがルイスを美しく、どこか恐ろしく照らす。
「んー、まぁまぁってとこだね」
ヴィンセントは笑顔で答えた。
ゆっくり立ち上がったヴィンセントはルイスに近寄り何やら話し出した。
俺は聴覚を敏感にして、その話し声を聞いた。
「…お前はユリア・アリスレパードが憎いだろう?」
ユリア!?
ルイスはユリアが憎いのか!?
ルイスはゆっくりうなずいた。
「……ならそれでいい。今すぐユリア・アリスレパードをつれて来い。…あの血は絶品だ」
「かしこまりました」
曇り、極悪さの増すルイスの目は細くなり、その鋭い目は何も映らない。
「頼んだぞ……」
そう言うとヴィンセントは砂のように消えていった。
どうして…。
ルイスはユリアが嫌いなのか…?
ルイスは目の前に倒れるゾルヴァーナの兵士を、足で踏み潰し、林に蹴り飛ばした。
そしてルイスは1人、歩き出した。
……血のついた靴で、足跡を残しながら。
ルイスが向かった先は俺達と逆方向。
一体何処に……。
するとルイスは林に入らないでピタッと止まり、林を見つめた。
緊張が走る。
ルイスの曇った目が林を見つめる。
少しの沈黙が続いたらルイスが口を開いた。
「…ユリア・アリスレパード、出てこい……」
――――!!??
ユリアがいるのか!?
俺は暗い林を神経を集中させて見ていた。
そしたら、暗い林の中から人の姿があった。
嘘だろ……。
嘘でいてくれよ……。
「…ルイス、久しぶりだね」
「……あぁ、そうだな。だが会ったところでお前はここで死ぬ」
ユリアはニッコリ笑った。
身体は震えているのに。
「死なないよ?」
ダメだ…。
ユリアはルイスに勝てない……。
勝てないもんは勝てないんだよ……。
「なぜだ」
お願いだから……。
「だって……」
ユリア……。
「…だって……」
……ユリア…。
「ルイスと一緒に帰りたいんだもん」
「小癪な…!」
ルイスは剣を持ち、ユリアに襲いかかった。