shining☆moon‐私の王子様‐
「なん…で…?」
私は涙を両手で拭う。
涙は大粒で、熱くて、止まる事を知らないかのように流れ続ける。
ルイスは私に寄ろうとしてくれたけど「大丈夫!大丈夫!」と私は右手の平をルイスに見せた。
するとルイスは申し訳なさそうな顔を見せた。
「ユリア…」
「…平気平気……」
何が平気?
全然平気な訳ない…。
私の目からは涙が止まる気配がない。
【ユリア】
私を呼ぶフレンの声。
その声に私の身体は跳ねるように反応する。
“優しさ”
“喜び”
フレンは私にいっぱいくれた。
時には、
“悲しみ”
“切なさ”
―――そして何より。
“愛”
をくれたね。
だけど……。
私は空を見た。
…この暗い空の下で、私はただ縮こまってるだけでいいの?
フレンは今何をしてる?
何を感じている?
何を考えてる?
何を…誰を想ってるの?
【俺がユリアを守るよ】
私には何が守れる?
何が出来る?
…私はフレンに何もしてあげられない。
ううん。
違うね。
何も出来ないだけ。
ただの、臆病で、弱くて、何よりも一番怖いのを避けているダメな人間。
そんな時、私の頭の中はフレン一色となった。
フレンの言葉が蘇(よみがえ)った。
【ばかっ。……ありがとう】
初クエストの時の言葉。
【じゃ、じゃあ倒れたままにしとけばよかったのかよっ!!】
私がお風呂で倒れた時の言葉。
【ユリアにとって、大切な人って誰?】
船上で聞いた唐突すぎる言葉。
【…俺はユリアの傍にいつまでも、いるからね】
いきなり抱きしめられた時の言葉。
全てが私のためにくれたフレンの言葉。
大好きなフレンの…。
「ユリア…?」
ルイスは私の頭を撫でながら覗き込むように私の顔を見た。
「…」
私は涙を拭いながら黙る。
ねぇ、フレン。
私は貴方の行いを、どのような形で、どのような気持ちで、何倍にして返せばいいのかな?
「…ねぇルイス」
「ん…?何…?」
私は涙を止めて、ルイスを見つめた。
「私ね…」
フレンが好き。
「…フレンが好きなんだ…」
私の言葉にルイスは微笑み返してくれた。