shining☆moon‐私の王子様‐
―――…
やがて暗闇は晴れ、元通りになった。
イアルは夜だけ自由に動けるので、その辺をパカラッパカラッと走り回っている。
ヴィンセントからは湯気がぷしゅーっとでていた。
これで終わったんだ…。
俺は思っていた。
……だけど。
「ははっ…ははは……」
「!?」
まだ、終わっていなかった。
「…ここからが本題だ!!!」
ヴィンセントは狂ったように叫んだ。
その言葉に俺は動くことすら忘れるぐらい、驚いていた。
いや、忘れていたり、驚いていたんじゃない。
…………動けなかったんだ…。
俺はハッとしてヴィンセントを見たらヴィンセントの姿はなく、いる気配すらない。
だけど、一度まばたきをしてみたら……、
「!!!!」
ニタニタと笑うヴィンセントの顔が間近にあった。
そして……。
目を大きく開け、気味が悪い顔をして口を開いた。
「さようなら、フレン」
「え?」
ドンッ!
俺は地面に叩きつけられた。
その勢いで少し跳び跳ねる。
「ぐはっ……!!!」
少し浮いたところで俺はヴィンセントに蹴られ宙に舞う。
上へと蹴りあげられた俺は、ただただ唖然とするしかなかった。
さっきのは……全て演技?
俺は思ってしまった。
ヴィンセントのいる地上から、何やら赤い光が見えた。
その赤い光はだんだん大きくなり…俺にぶつかった。
熱い…。
きっと炎なんだ、と我ながら思った。
【俺がユリアを守るよ】
いつしか交わしたユリアとの約束。
…ユリア、ごめんね。
俺、カッコつけてあんなこと言ったけど…。
…………ユリアのこと、守れないや…。
俺は、炎と共に地上へと落下する。
その途中俺は言った。
「…さようなら……ユリア…」
と。