shining☆moon‐私の王子様‐
~~ユリア.said~~
冷たい冬の風が私の肌をキンっと刺す。
フレンと戦ってからどのくらいの時間が経ったのだろうか。
気が付けばもう私の身体はボロボロになっていた。
「はぁ…はぁ…んぐ…!!」
見たことも聞いたこともないフレンの魔法が私にぶつかり、私は避ける間もなく地面に叩きつけられ徐々に痛みを増してく。
“痛み”
“苦しみ”
それだけがどんどん私に降り積もっていく。
だからといって私はフレンに反撃はしない。
なんで?
だって……。
大好きなフレンの身体に私が付けた傷はあって欲しくないから。
もしも目の前にいる“フレンもどき”が理性を取り戻し“本物のフレン”に戻って傷があったら…痛いから。
だから私は…。
「きゃあっ」
フレンの攻撃をひたすら受けることしかできないんだ。
「うぁ…きゃあ!!」
何度も何度も斬りつけられて。
「…あ゛ぐ……」
何度も何度も魔法を浴びて。
「きゃあぁ!!」
何度も何度も…痛み、苦しむんだ。
「ばかな…」
ヴィンセントは冷や汗を浮かべながら私を見て、ポツリの言葉を放った。
そしてヴィンセントはゆっくり私に近寄ってきて、“フレンもどき”は剣をさげて相変わらず無表情のまま。
「…ヴィンセント…」
私はありったけの力を振り絞って言葉を口から放つ。
ヴィンセントは私の頬両方を両手で優しく包み込んだ。
「…どうして、反撃しない…?」
ヴィンセントの言葉に私は力なく微笑んだ。
「…フレンが…大切だか……ら…」
「…っ…」
私は思った。
この人は優しい心もあるんだ、と。
――だけど。
「…は、なせ!!」
「…!!」
私は勢いよくヴィンセントを突き放した。
この人は極悪な心も持っている。
私は剣を構えヴィンセントを睨む。
ヴィンセントは呆れたように笑った。
「なんの真似ですか?」
「なんの真似でもない」
「早く…早くフレンを殺せばいいの…」
ヴィンセントが言葉を言い掛けながらも私はお構いなしに上に覆い被さるような言葉で、
「私は…エルランドの仲間たちは、貴方みたいに人々を無差別に殺したりしない!!!傷つけたりはしないんだから!!!!!」
私の声は虚しく響いた。
――この声はフレンには聞こえた……?