-恋花火-
子供だけで出歩いた夜店街。

いつの間にか、みんなとはぐれて…。

そんなことを思い出しながら、温泉郷の中心街を歩く。


「5歳くらいの男の子、見かけませんでしたか?迷子になってしまって…」

「う~ん…見てないと思うけど。若女将も大変だねぇ~」


顔見知りのおばさんに聞いても、夜店のお兄さんに聞いても、見てないって言う。

やっぱり、裏道に入ったのかな…

そう思って裏通りに入る。

目に入ったのは公民館。

センパイとの待ち合わせ場所。

気が付けばもう8時をすぎていた。

人影が見えた。

まだ待っててくれてる!?

謝ろうと思って近づいて、ようやく見えてきたけど…目を疑った。


「祥ちゃん??」

「及川先輩なら帰ったよ」

「あ…そう。って!何で知ってるの!?てゆーか、祥ちゃんは何してんの!?」

「話せば長くなる」


デートの待ち合わせ?

なんて聞けなかった。

まぁいいや。

もう決めたんだから、祥ちゃんのことなんて気にしない!


「結芽は何してんの?」

「そうそう!5歳くらいの男の子見なかった?お客様の子供さんなんだけど…」

「写真見せて」

「この子、今日は黄色いTシャツを着てたみたい」

「…見かけたかもしれない。神社の階段の前あたりで…」
< 19 / 22 >

この作品をシェア

pagetop