-恋花火-
「ほんとに!?ありがとうっ!」


走り出そうとした、その時。

祥ちゃんが私の手首をつかんだ。


「お前は戻ってろ。他の仕事もあるんだろ?女将不在で出てきたらマズイだろ」

「だって……」

「オレが連れて帰るから」


迷ったけど…正直助かる。

うなずいて、月之屋へと引き返した。



私が戻ってから、しばらくして。

ガラガラと玄関の音。

そこには、祥ちゃんと、手をつないだ男の子が立っていた。


「カオル!!どこ行ってたの!?」


松の間のお客様も一安心した様子。


「祥ちゃん、ありがとう!ほんとに助かったよ~」


お運びするためのビール瓶片手に、祥ちゃんにお礼を言う。


「そういえば、祥ちゃんは大丈夫なの?待ち合わせしてたんじゃないの?」


普段から口数の少ない祥ちゃん。

私とは目を合わせずに言った。


「あぁ……あれは、結芽を待ってたんだよ……」

「……え?えぇ!?」


驚いて、思わずビール瓶を足の上に落としそうになった。


「10時なら終わるか?」

「えっ!?あ、はい…」

「なら、10時くらいに迎えにくる」


訳も分からず返事をした。

なに!?この急展開!!
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