-恋花火-
二、 紅掛空色
---あなたを想うとき。
【紅掛空色 べにかけそらいろ】
お見送りが終わって、ひと段落。
「お疲れ様でーす」
「お疲れ!」
仲居さんたちは中休憩。
「結芽ちゃん♪」
「わぁ、かやのちゃん!今日来てたんだ!」
かやのちゃんは、この温泉郷で1年前から芸妓をやってる19歳。
歳が近いからすぐに仲良くなった。
「橘くんいるんじゃない?」
「ほんと?」
「みてきてあげようか?」
「あ、いいの。今日はこのあと姐さんと約束してるから」
かやのちゃんは、うちで働いている料理人の橘くんと付き合っている。
橘くんは今は見習いだけど、実家はそこそこ有名な料亭らしい。
武者修行ってやつ?
最近は揚げ場に昇格したらしい。
けれど、かやのちゃんは言う。
「一人前になったら実家に帰っちゃうから、ずっと下っ端でいいのに~」
付き合ってても、悩み事はつきない。
「結芽ちゃんはどうなの?」
「祥ちゃんのこと?」
「ちょっとは進展したの?」
「全然!!私のことなんて女とも思ってないみたい。もう慣れてるけどねっ」