-恋花火-
笑うと目尻が下がる。

祥ちゃんの横顔を、いつまでも見ていたかった。

それなのに…

いつもどこからか邪魔が入る。

なんでなの!?

宿側から足音が聞こえてきて、さっきの番頭さんが顔をだした。


「若女将、先日問い合わせのあった雑誌の記者の方がお見えになっておりますが…」

「えぇっ!?」


そういえば、老舗旅館特集の取材をさせて欲しいって言われてたっけ…

うっかりなのは昔から。

思い返せば、今日がその打ち合わせの日だったのかもしれない。


「すぐ参ります!」

「柊の間にお通ししておりますので」

「わかりましたっ」


残念だけど、祥ちゃんには帰ってもらわないといけなくなってしまった。

もっと二人きりになりたかったのに~。


「せっかく来てくれたのにゴメンね」

「べつに、オフクロが行けってうるさいから来ただけだし」

「なによぉ、ウソでも“キミに会いに来た”とか言えばモテるのにさぁ」

「モテたいわけじゃないし…」


冗談が通じないんだからぁ。

真面目かっ!?


「じゃあね、祥ちゃんも仕事がんばってね」


そう言って立ち上がろうとした時。

突然、祥ちゃんの手が勢いよく私の手首をつかんだ。

その反動で、思わず座り込むくらい。


「わっ!!なに!?」


祥ちゃんの真剣な眼差し。

え……?

なに……?
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