恋人 × 交換!? 【完】
「は、はい。ありがとうございます」
私がポケットティッシュを丸ごとわたすと、彼は、
「サンキュ。円ちゃん気がきくんだね」
と、1枚引き抜いてから口もとを拭った。
そして、
「混乱、してるよね……そりゃあ。いきなり恋人交換だなんて」
にぎわうヨーヨー釣りのあたりを眺めながら、拓人さんは切り出した。
「……はい」
「実はさ、数日前かな。円ちゃんと街ですれ違ったんだよ。もちろん、その時点では顔見知りでもないから、君は覚えてるわけないだろうけど」
「え、あ、まあ……」
「そのときに、ひと目ぼれしたんだよ。はっきりいえばね」
「ひと目、ぼれ?」
私は、思ってもみない言葉に大きな声をあげた。
まわりの人たちが数人ふり返ったものの、すぐにお祭りの空気にふたたび溶けていく。