恋人 × 交換!? 【完】
正直、カッコよすぎるし、優しすぎるし、えくぼの映える微笑も、うっとりするくらいに完全無欠。
そんな、完璧といえる王子様からの告白だから、空でも飛べそうなくらい、舞い上がっていいはず。
(なのに……)
ドキドキしてる胸とは反対に、その胸のさらに奥にある「心」は、どういうわけか、シュワシュワと弾けはしなかった。
まるで、ぬけ切った炭酸みたいに、しーんと……。
「あーあ。紅茶落ちちゃったね」
話題を逸らすように、助けられたときに転げた缶を、拓人さんが拾ってくれた。
「す、すみません」
さっきの自販機へ缶を捨てに行く後ろ姿に向かって謝る。
そのとき私は、歩道のわきにもうひとつ落ちているものに気づいた。
(……ケータイ?)