恋人 × 交換!? 【完】
彼の気持ちが、こっちの心にまで流れこんできて、痛んだから――。
俺様な性格の裏にあった素顔が、あまりにも私と似てたから――。
「前にも言ったけど……。ずっと、夢だったの。素敵な恋愛するってことが。誰かからしたらくだらない夢だけど、私にとっては一番順位が上だった。憧れてた。そして、奏と出会った」
「…………」
「正直、何度も傷ついたし、夢見たものとはだいぶ道筋が違った。でもね、奏の全部を聞いた今は……思うの。『この人とずっと恋愛してたい』って」
ずっと見てきた夢に間違いはなくて、相手が奏で本当に良かった――私は素直にそう思った。
「そう……か……」
しばらく、沈黙の時間が続いた。
お互い、伝え合った気持ちを整理するには、ちょうどいい間ではあったのかもしれない。
やがて、
「……がとう」
ざわざわとこすれるご神木の葉音に紛れて、かすかに言葉の欠片が聞こえた。
「えっ……?」
立ちあがった奏が、私に背中を向けた。
「ありが、とう……」
あらためていい直しながら、前に出て私と距離をとる。
そして、うつむき加減になって、手を目もとにやった。
メガネをずらして、指でこすってる仕草だ。