恋人 × 交換!? 【完】


私が見たのは、メールの下に出てくる「変換」の画面。



「あ」を押したあとに出てくる変換リストの上位に並ぶ文字の中に、最も欲しかった言葉があった。



奏と恋人になってからずっと、夢見ていた言葉が。



「……盲点だったな。こんな部分で気づかれるとは思わなかった」



奏は、恥ずかしそうに濡れた画面を親指で拭う。



「待って、たん、だよ……私……。なのに……メールにも……書いて、くれなくて……」


「こんなセリフ、いったことも、書いたこともねぇし。そんなほいほいと使えるわけねぇだろ」


「でも……でも……これ……」


「何度も使おうとしたんだけど、できなかったんだよ」



照れを隠すようにして、頭をかきむしる奏。



「いつか使おうと思って、単語登録だけしてたんだけど。まさか、本人にバレるとはな。あ~、なんか恥ず」





そう。








変換リストの上位にあったのは、ずっと欲しかった言葉、夢見た言葉――。

< 265 / 270 >

この作品をシェア

pagetop