恋人 × 交換!? 【完】
私が見たのは、メールの下に出てくる「変換」の画面。
「あ」を押したあとに出てくる変換リストの上位に並ぶ文字の中に、最も欲しかった言葉があった。
奏と恋人になってからずっと、夢見ていた言葉が。
「……盲点だったな。こんな部分で気づかれるとは思わなかった」
奏は、恥ずかしそうに濡れた画面を親指で拭う。
「待って、たん、だよ……私……。なのに……メールにも……書いて、くれなくて……」
「こんなセリフ、いったことも、書いたこともねぇし。そんなほいほいと使えるわけねぇだろ」
「でも……でも……これ……」
「何度も使おうとしたんだけど、できなかったんだよ」
照れを隠すようにして、頭をかきむしる奏。
「いつか使おうと思って、単語登録だけしてたんだけど。まさか、本人にバレるとはな。あ~、なんか恥ず」
そう。
変換リストの上位にあったのは、ずっと欲しかった言葉、夢見た言葉――。