恋人 × 交換!? 【完】


口調はいつもの俺様だけど、知的なメガネの奥の目は怒ってない。



私は、少しだけ渋面を作って、



「だって……急にこいっていうんだもん。奏、昨日は暑いからって断ったのに」



本気で反抗してるわけじゃないんだよ光線を発しながら、けれど控えめに抗弁した。



(私のせいじゃないのになぁ~)



本来なら、夏祭りには行かない予定だった。



最初に私が誘って、奏が「行く」って承諾してくれたのに、前日の夜になって、キャンセルのメールが入って。



関節が外れるほど肩を落として迎えた登校日の今日、放課後になって一転、「浴衣着てこい」という連絡があった。



だから、急きょスクランブルをかけて、泣く泣く片づけた浴衣をふたたび用意してきたのに――。



そんなこんなで、今回もまた、機嫌のいい人が持つコンビニ帰りの袋みたいに、振り回されっぱなしの私。



別に、嫌いじゃないけど……。

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