恋人 × 交換!? 【完】
「ふうっ……」
頭をかきながら、奏が長いため息をついた。
「円」
名前を呼ばれた。
なのに私は、ドキッともしなかった。
いつもならウサギになる心臓も、普通に動くことすら面倒だとボイコットするみたいに、波風ひとつ立たたない。
心が、ひと粒も弾けない。
「円?」
「…………」
声も完全に鍵をかけて閉じこもってる。
返事ができない。
その副作用からか、鼻の奥がツンとしてきた。
まばたきしたら、頬に熱いものが伝った。
「お、おい……」