ひとりぼっちの勇者たち
こんな感情的になったのは、どれくらいぶりだろう。
いつ以来だろう。
あたしは感情表現や表情が豊かではない。
昔からそうだった。
だから自分でも不思議でならない。こんな自分。
つられたんだ、きっと。
時々彼がこの体を使うから。
体の何かがかわったのかもしれない。
前のあたしだったら、こんな風にはきっとならなかった。
彼のことなんて、どうでもよかったのに。
こんなこと言うつもりは、微塵もなかったのに。
でももう止まらなかった。
この人の言動が、所詮ひとりよがりだとわかったから。
気づいたから。
心の底から、ムカついたから。
「あなたが死んでもなんにも思わないひとは、この世界にきっとたくさん居る。だけど」
立ち上がって拳を握る。
右手は痛くない。
もう痛まない。
晒されるだけだった傷口に、包帯を巻いてくれたから。
「あなたが死ぬと哀しむひとも居る。ひとりかふたりか、たったそれだけだとしても、居るのよ確かに。ここじゃなくて、こんな暗い端っこじゃなくて、もっと広いあなたの知らない世界に」
そこはきっと、あたしも知らないまだ見ぬ世界だろう。
あたしは知らないままでもいい。
だけど、この人には。
弱くて泣き虫で臆病で生きるのが下手なこの人には。
必要な世界だ。