ひとりぼっちの勇者たち


あの日は赤い夕暮れが、残酷なほどに綺麗だった。

呼び出された屋上。
またいつもの遊びだと思ってた。
きっとすぐに、終わるって。

だけどその日は…いつもと違った。

『…傷ついた…?』

日向さんが訊いた。
あたしはふるふると首を振る。
屋上は段々と、暗闇さえ失っていった。

『…だって、いちいち傷ついてたら、キリがないじゃない…これから先だってずっと、大人になったってきっと…苦しいことも辛いことも、たくさんある…それらすべてに傷ついて、立ち止まってたら…前に、進めない…大人になんかなれない…割り切って、ぜんぶ受け入れてやり過ごすのが、一番賢いじゃない…! だって…』

堀越恭子たちと、それからあまりよく顔は見えなかったけど、桜塚たちだったのだろう。数人男子もいた。

男子に殴られるのは苦手だった。
痣がいつまでも残って、消えないから。

それからそこであの人と、八坂昴流とも初めて会ったんだ。
忘れもしない、最悪の出会いだった。

『だって誰も助けてはくれなかったじゃない…!』

< 340 / 394 >

この作品をシェア

pagetop