ひとりぼっちの勇者たち


ありったけの力を込めて、体ごと体当たりする。
ぐらりと目の前の昴流さんの体が傾いた。

思わぬ反撃にか掴まれていた手が緩み、その隙に手を払って腕の中から抜け出、間合いを置いて向き合う。
昴流さんが意外そうな目でぼくを見ていた。

「もう…もう、そういうのは、やめるんです、やめたんです…! これからはもうカンタンに、受け入れない、ゆるさない…無抵抗で平気なフリしてても、けっきょくは逃げているだけだから…っ 抵抗することで今まで以上に傷ついたとしても、それでも…っ もうこの体には、指一本、触れさせない…! 絶対に…!!」

叫んでぼくは、屋上のドアに向かって駆け出す。
これ以上こんな所に、居られない。居ちゃいけない。

じわりと涙が滲んだ。
だけど拭った右手の包帯にすぐに染み込んでなくなった。

本当はさっきの言葉は、堀越恭子達に言うつもりだった。
それで終わるとは思っていない。そんなカンタンなことだとは思っていない

だけど決意表明は、口に出して相手に伝えないと意味がないから。

それは結局果たされなかったけれど、だけどもういい。
どの道最初からこうするつもりだったんだから。

調べておいた校内地図を頭の中で反芻しながら目的地へと廊下を走る。
登校時間真っ只中で、校内は生徒達と喧騒で満ちていった。

校舎内いっぱいに、チャイムの音が響き渡った。

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