ひとりぼっちの勇者たち


彼と出会って3日目にして、4回。

それはあたしの中での想定をはるかに超えた数字だ。
しかも元に戻るタイミングもそれぞれにバラバラで、一体何が基点なのかさっぱりわからない。

一番最初は一夜明けて寝て起きたら元に戻っていた。
だからてっきり、互いの意識を手放した後に元に戻るのではと推測していたのだけれど、どうやら違ったらしい。

昨日、学校での補講の最中に入れ替わった後…ひとまず学校から出ようとした瞬間に、あたし達は突如元の体に戻っていた。

並んで歩いていた途中で視界が入れ替わり、なんの前触れもなくあたし達は、元の体に戻っていたのだ。

しかしその夜、再び入れ替わってしまった。
そう時間を空けずして。

その場その場で状況は違ったし、入れ替わりのきっかけになるような衝撃も受けていないはず。
それともこんな不可思議な現象に理屈を求める方が間違っているのだろうか。

なんにせよ、こう不規則に、しかも一日に何度も入れ替わるのはカンベンしてもらいたい。
精神的にも疲れるし、弦達を毎回誤魔化すのも一苦労だ。
家事も中断せざるをえないし。

さすがに慣れてしまった彼の部屋で再度ため息をつきながら、そっと右手を持ち上げる。
そこには昨日巻いてもらった包帯がきちんとあって、僅かにほっとした。

…もしかしてこれが原因かと思ったけど、そういうわけでもないみたい。

昨日入れ替わった時、彼の手にはカッターが握られていて、この右手首は血まみれだった。

あんなに痛い思いをしたのは、初めてだった。

< 64 / 394 >

この作品をシェア

pagetop