ひとりぼっちの勇者たち


時刻は日曜の昼の11時。
彼の部屋は昼間でもカーテンが閉められていて、日の光が殆ど入らない。

広い部屋の大半は、本と本棚が半分を占めている。あとはパソコンデスクにテーブルにベッド。
ひきこもっている割には部屋はシンプルで綺麗できちんとされていて、マンガやゲーム機等も見当たらない。
最初この部屋を見た時は、イメージしていた“ひきこもりの部屋”とは全く違って拍子抜けだったほどだ。

何よりも驚いたのは、この部屋自体の場所だった。
家の中に部屋があるのではなく、家の外に部屋がある。
彼が言うには、この部屋は後から増築された離れの部屋だそうだ。

本宅とこの部屋を繋ぐ短い廊下はあるものの、家自体とは切り離された場所。まるで隔離された部屋のようにもみえる寂しい場所だと思った。

それは、あたしはあの小さな家で兄弟6人でぎゅうぎゅうになって暮らしているから、そう思えるだけなのかもしれないけれど。

あたしは手早く身支度を済ませると、外へと出る扉へと手をかける。
部屋にあるふたつの扉の内ひとつは本宅と繋がっていて、もうひとつはすぐ外に繋がっている。
これならいつ部屋を出ようが戻ろうが、家の人には全く分からないだろう

ちらりと、もうひとつの扉を見る。

昨日この手首の包帯を巻いてくれたのは、彼のお兄さんだった。

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