ひとりぼっちの勇者たち


彼とこれまでに数度入れ替わった中で、確かに彼の家族と接触したのは一度きりだった。

うちだとそうはいかない。
常に弟妹達が誰かしら傍にいるし、家でやることもたくさんある。

そういう意味では、彼の方が大変かもしれない。
入れ替わる度にいつも逃げ出してるけれど。

それに最初以外は割と比較的短時間で戻ってた分あまり実害は無かったし、避けられるものなら避けていたのが現状だ。お互いに。

だけど今回は違う。
他人の家族という空間の中に、食事の間中ずっと居なければならない。
そんなの無理に決まっている。だけど。

……家族のルール、か…

それを言われると無下にできないのが更に厄介だった。
それがどれだけ大事なことか、知っている。
解っているから。

あたしはもう一度大きく溜め息つくと、決心して携帯のディスプレイに向き直る。

「……仕方ない…なんとかやってみるけど、そっちはどうするのよ?」
『あ、あの、お腹痛いフリして、えっと、弦くん? に後お願いしてきちゃった…』

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