英雄飼育日記。
私は慌てて、ハンガーにかけてある制服を手に取る。
今は秋だからブレザーを着なければいけない。
大して寒くないのに着るのは衣替えについて考えを改めた方がいいと思う。
ブレザーを羽織り、リボンに手をかけながら思った。
「………………サクハ君?」
「うわー勝手にうろつかないでよあと入るなよ気持ち悪い!」
「…………………………ハイ」
ようやくブレザーのボタンを全て閉め終える。
着替えが完了した私は、学生鞄を持って部屋を飛び出した。
そのまま家ごと飛び出してしまいそうになるのを押さえ込む。
「えーと、カナト!」
「は、はい?」
「家を出ない、荒らさない、人が来ても出ない! 居留守をする!」
「命令?」
「命令!」
私は怒鳴るように返して、玄関へ向かった。
やばい、このままじゃ遅れてしまう。
私は空でも飛べるような速さで、学校へと走っていった。
朝の襲撃を忘れて。