英雄飼育日記。
“使役獣”発言に、“朝見た”発言。
それに加えて、どこかで見たことあるような、キープされている無表情。
これらの要素から推理するのは案外簡単だった。
「お、おま、朝のふうろうってやつか!」
「ご名答」
聞き覚えのある返しに、確信する。
でもまさか、誰も予想できないだろう。
クラスメイトが人外で、自分を襲ってくるだなんて。
ただでさえあのファンタジックな使役獣ってやつだけで手一杯だというのに。
私は行き場のない怒りを内に留めることしかできず、ただもやもやとしていた。
それを走ることによって消化する。だがすぐにイライラは募ってくる。
そんな内面の崩れからか、足がもつれる回数がいつもより異常に多い。
それは、見えない何かに邪魔されているようでもある。
足下の、小さな風の集まりに。
「ちょっと! 何でこんなことするの!」
現実は甘くない。
それを実感させてくれたのは、あっという間に現れた行き止まりの存在だった。
私は少し考えて、背に壁をつける。
まさか殺しはしないでしょう。呑気かとも思える予測。
足ががくがくと震え、今にも崩れてしまいそうだ。
「それは君が使役者で、種持ちだから」
「………………殺しはしない。種をもらう、それだけだ」
風見が、私に一歩、また一歩と歩み寄ってくる。