英雄飼育日記。
そんな私の現実逃避に拍車をかけるカナトの一言。
「あれくらい私にだって出来る」
「さ、さすがファンタジー生物!」
「……気を強くもってくれ」
夢の住人にまで心配される私、の頭。
とんでもない問題児だと自分で自分に突っ込む。
「サクハ君、御手を拝借」
差し出された、私よりも大きい掌。
私は自分のそれを重ねることで、返答を出す。
そして、カナトが清々しい程胡散臭い笑みで言う。
「酔わないように頑張ってくれ」
何に酔うとですか。
質問は声にならず、思いだけで終わってしまった。
疑問を声に出そうとして出せなかった間の出来事は、全てが速すぎてうろ覚えである。
1。
ぐいっと下方に引っ張られる。
2。
何故かカナトの足が、ブロック塀の影に溶け込んでいるというか沈んでいるというか。
3。
よく見たら私も沈んでた。
「……………………いっつふぁんたじー」
4。
影の中に落ちた。
5。
3秒くらいで家に着いた(この間思考停止)。
6。
忠告虚しく酔った。