英雄飼育日記。



何よ、やっぱり夢じゃない。


大好物のアロエヨーグルトを一口。それから心の中で不満を漏らした。

どうしてあんな悪趣味な夢に5日間も振り回されなきゃいけなかったのだろう。

目が覚めて一度目のため息を吐く。


新聞でも取りに行こうと立ち上がる。

そして玄関を出た時。

見てはいけない(だろう)ものを見てしまった。



「あ、マスター」

「………………」


その時の私のドアを閉めるスピードは世界一だったと思う。
大好物その2の韓国のりを賭けてもいい。


なんて自分の神業を自画自賛している場合じゃない。

驚きのあまり、新聞をとるのを忘れていた。

寝ぼけているんだ、きっと。そうそう、そうに違いない。

もう一度ドアを開け、門に向かう。



「あ、マスター」

「………………」


ごめんなさい神様、お許しください。

何故私の家の前に私を「マスター」と呼ぶ見知らぬ男がいるとですか!

私には全くわからんとです!

しかも男は上半身何も着ていないとです。私絶対怪しまれるとです。

あらやだー、守園さんの娘さん、男の人を家の前に放置させてたんですってねー。しかも半裸でー。
しかも「マスター」なんて呼ばせてたそうよー?
あらやだー、趣味は控えてほしいわー。


やばい。

このままじゃご近所付き合いにとんでもない亀裂が入る。

そんなこと、あってはならん。

私は男の襟首を掴み、諸刃の剣ともいえる一言を放つ。


「…………とりあえず、中に入ってください」



ごめんなさい、私は見ず知らずの怪しい(半裸の)男を家にあげちゃいました。
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