英雄飼育日記。



勿論本当に時間が止まる訳がない。


ただ、時間が止まったと錯覚しそうな程、部屋が静かになったのだ。



光に包まれたかと思うと、部屋はすぐに元の姿を見せる。

まばゆいばかりの光が消えた後の部屋は、銀髪男が襲ってくる前の様子に戻っていた。


あ、やっぱ夢じゃん。

そうじゃないと、このアホみたいな展開にならないし。

よっしゃー、あとは目を覚ますだけだ。



「………………開花したか」

「いや、まだ発芽程度だろう。それで、まだやるのかい?」

「遠慮しておこう。僕も主も用事があるので」


銀髪男はそう言うと、あっという間に姿を消してしまった。

そして残ったのは、疑問と混乱と悪夢のみ。



「で、私の正体についてでしたっけ?」


カナトはダガーを一瞬でどこかにしまう(というより消した)と、再び席についた。

私は思わず一歩後ずさる。

その様子を見て、カナトは小さく笑った。


「怖がらせちゃったみたいだね」

「な、なんて馴れ馴れしい奴…………!」

「ならば敬語で」

「あー! なんかむかつくー!」


結局、敬語禁止ということとなった。

私は馬鹿か。そういえば馬鹿だわ。


1人沈んでいると、男が話し出す。

自らの正体について。




「私の種族名は影狗。そして昨夜、君の使役獣となったヒーローだ」


「…………しえきじゅーとか意味わかんないでーす」

あと、もう突っ込む気力はございません。


「…………それは困った。とりあえず説明するよ」


カナトは苦笑しながらも、口を開いた。
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