英雄飼育日記。
世の中には、特殊な力を持った人間が存在する。
特殊な力を持つ人間らはエスパー、霊能者、超人やら化け物と色々な呼び名を持っていた。
そんな人間らは、「よくないモノ」に襲われることが多い。
それを防ぐために妖と契約を結び、「使役獣」として守ってもらう。
これが、私とカナトの間に起こった出来事の説明。
「でも契約なんてしてない!」
「君は私に名前をつけただろう? それが契約だ」
「………………解除は」
「できない。解除するには君か私のどちらかの死亡、もしくは私を破棄するしかない」
「破棄の方法は!?」
「私の心臓に、これを刺すだけだ」
差し出されたのは、1本の黒いダガー。
いくらなんでもそれはない。
というか刺すイコール死ぬってことじゃない。
私は、理不尽、そう吐き捨てた。
それから、疑問をぶつける。
「っていうか私、別に「特殊な力」なんて持ってませんけど?」
「詳しい説明をするとだね、特殊な力を持つ者は「種」も持っているのだよ」
カナトが言うには、こうらしい。
その「種」は、普通の人間は所有しない物。
「種」は発芽、開花などをさせれば能力も上がるらしい。
つまり、発芽も何もしなければ能力は何も出ない。
それが。
「あんたと契約して、ついでにさっきの奴にも会ったから目覚めた……っていう?」
「流石私の使役者、物わかりがはやくて助かるよ」
「マスター呼ぶな気色悪い」
「そして冷たさも流石」
ドMかこいつは。
私は若干引きつつ、あることを理解する。
「つまり、お前達と関わらなきゃ私は一般人でいられたってことですよねえ?」
「あはは、サクハ君の笑みは怖いんだね」
「呼び方も笑い方も何もかもが気持ち悪い!」
私はアロエヨーグルトを食べ尽くし、台所へ向かう。
ふと、足を止める。
それから、私の一言に対して割と傷ついている様子のカナトに呼びかけた。
「…………助けてくれて、ありがと」
それだけ言って、私は逃げるように台所へ向かった。