タイトル未定
池田屋事件
元治元年6月5日
その日は早朝から妙に騒がしかった
縁側を出た屯所のすみにある拷問部屋の前には幹部をはじめほとんどの隊士が集まってなにやらざわざわと会話をしている
部屋の中からは土方副長の怒鳴り声と誰かの泣き叫ぶ声
あたしは人だかりの中から沖田先生を見つけた
「沖田先生
なにがあったのですか?」
すると沖田先生はまっすぐ拷問部屋を見つめ
「どうやら山崎さんの勘が当たったようですね」
沖田先生からはいつものおちゃらけた雰囲気は消えていた
沖田先生だけじゃない
あの三人組までもが真剣な眼差しで拷問部屋を見つめている
「ということは今拷問部屋にいるのは枡屋の喜右衛門ですか?」
「はい
新炭商枡屋の枡屋喜右衛門
本名は古高俊太郎です
なかなかしぶといらしく
もう拷問を始めて何刻もたつというのに話したのは本名と生国は近江
というだけだそうです
まったく土方さんも大変ですよね」
「......そうですか」
中からは相変わらず土方さんの怒鳴り声と古高の泣き叫ぶ声しか聞こえない