タイトル未定

それからのあたしは汗を拭う暇もなく

生きている浪士を縄で縛り後片付けをし

隊士の中で軽い怪我をしている人の応急措置を手伝い

池田屋を後にした頃にはすっかり日が登っていた


屯所に帰る途中あたしはずっと気になってしょうがなかったことを永倉先生に聞く

「藤堂先生は?
藤堂先生はどうなさったんですか?」

永倉先生はあたしがこんなに心配して聞いているのに、にこっとして

「あいつ油断して鉢金とっちまってよぉ
額をずばーっとな
でも安心しな
死んじゃいねぇよ」

その言葉を聞いてあたしは本当に安心した

「....よかったぁ」

あたしが一言そういうと永倉先生はあたしの頭をぐしゃぐしゃに撫でながら

「総司を守ったんだってな?
よく頑張ったな...」

そして優しい笑顔で微笑んでくれた

あたしは池田屋での恐怖を思いだしたのと安堵の気持ちで涙がこぼれおちた

そしてやっとその汗と涙と血でぐちゃぐちゃの顔を拭うことができた



< 59 / 62 >

この作品をシェア

pagetop