辛口男子の甘い言葉
私は恐怖を押さえながら、道を曲がると、その音もついてくる。
それを何度か繰り返し、決心した私は通りかかったコンビニに逃げ込む。
店内は人が10人前後いて、1人でいるより安全だった。
そして誰かに連絡をしようとケータイを握る。
弟にかけたが出なくて、両親はまだ仕事だ。
電話をしているうちに、あの男も店に入ってくる。
頭が真っ白になった私は慌ててコンビニを飛び出し、すがるような思いで電話をかけていた。
そいつは1コールで出てくれた。
《奈絃、お前な!先に帰んなって言っ》
「ひっ…ろせ…今どこ?私、今コンビニ出て…きゃっ!!」
《はっ!?おい!!》
腕に鳥肌がたつ。
腕を捕まれたのだ。
「っ、!!」
反射的に思いっきり腕を振り払った。
カツン!
すると何かが私の足元に転がってきた。
それに目をやると、私が探していたあのヘアゴムだったのだ。
「ヒッ…」
思わず後ずさる。
サラリーマンの顔をみると、いつも閉店時間にやってくるお客さんだったのだ。
怖くて怖くて、恐怖で体が動かなくなった時。