辛口男子の甘い言葉
「おい!!」
後ろから広瀬の声がした。
その声に反応するかのように、目の前の男は無言で後ずさる。
「いい年してストーカーなんかすんじゃねぇよ。もう店には来んな、次来たらただじゃおかねぇ。」
私の手を引き、背中に庇うようにしてくれる。
ふわりと広瀬の匂いがして、鼻の奥がツンとする。
広瀬の背中にすがり付きたい気分だった。
サラリーマンは慌てて体勢を変えて走り去っていった。
聞こえなくなった足音に安心して、冷や汗が急にじわりと出てくる。
「…大丈夫か?」
私を気遣ってか、その声はいつになく優しかった。
「……」
今口開いたら泣いちゃう気がして返事ができない。
すると広瀬は無言で私に向き直り、そっと抱き締める。
表情は見えなかったが、それで充分だった。
広瀬の腕の暖かさに私はヤられてしまった。
気づけば鼓動が早くなっていた。