辛口男子の甘い言葉
「ひ、広瀬…もう大丈夫…」
顔が熱い。
自分でも分かるほど。
私の身体を放す広瀬。
すると、少し怒ったような声が降ってきた。
「…ったく、お前は警戒心無さすぎ。」
「だって…」
「先に帰んなってあんだけ言ったろ?」
「…うん……。」
「そんなんだから心配なんだよ。」
いつもの悪態もこの時は優しさにしか感じられなかった。
「でも何でここにいるって、分かったの?電話で伝えたの少しだったのに…」
「近くのコンビニ、ここしかねぇし、前からあのオッサン目ぇ付けてたからな。」
「…広瀬は気づいてたの?」
「なんとなくな。店に来るのだって奈絃がいる時だけだったし、閉店間近の人が少ない時間にしか来ないって…嫌でも気付くだろ。」
「そっか…じゃあ、最近やたらとレジをやりたがったのは…」
「お前に近づけないために決まってんだろ、アホ」
「そ、っか…」
「ああ。」
他人のことなのにそんな所まで気を配れるって…
「広瀬すごい…」
「……ぉ、おお!当たり前だっつの。」
照れてるのか、私と視線を合わさずにいる嬉しそうな広瀬が見える。
こいつがいてよかった。
「で、まだ怖さ抜けきれてねーのか?」
「まぁ…トラウマにはなるよね…。しばらく。」
少し下を向いた私を広瀬は覗き込む。
私の視界に入ってきた広瀬はニヤリと笑う。
「俺の胸貸してやろーか?」
「誰が借りるか!ばか!」
咄嗟にそう言ってしまう私の方がばかである。