辛口男子の甘い言葉
「…何か思い出に残る一枚なんですか?」
自分の口から言ったとは思えないほど素っ気ない口調だった。
「ビビった…別に、なんでもねー。」
パタンと閉じて、私を見る広瀬。
「奈絃…俺あの公園でよく遊んでたんだよ。」
「は?」
いきなり何を言い出すんだ彼は。
「……………。」
とりあえず聞く態勢を取ったが、一向に話す気配がない。
「……?」
「……いや、やっぱいーわ。勉強しろ、勉強。」
「どっちやねん!」
「何で大阪弁。」
言い返そうと、構えた時…
「2人ともごめん。長風呂しちゃって…」
「「乙女か!!」」
私のよく分からないモヤモヤした感情は、ヒロ君に向けて放出した。
…そしてその日の勉強会があってか、何日か後に行った再テストに合格できた。
「よかった、ほんとよかった。」
只今リッカとお買い物中。
「うん。これも広瀬のおかげですわ。」
「感謝の気持ちは表したの?」
「広瀬さんのおかげです、とは言ったよ。」
そんな私にため息をつくリッカ。
「そーじゃなくて。…はぁ。」
「え、なに?」
「いや、奈絃に言っても多分理解できないと思うから止める。」
「えぇー…。」
「あ、これ可愛い!」
話の途中でリッカは商品に気を取られ、話が流れてしまった。
感謝の気持ちかぁ…
軽い感じじゃないと恥ずかしくてなかなか言えないのに。
たまにはちゃんと言った方が言いのかな…。
リッカの後ろで私はぼんやりとそんなことを考えていた。