辛口男子の甘い言葉
2章

夏の思い出



真夏、太陽が散々と照りつけるある日。




バイトが終わってから、店長が広瀬に声をかける。




「朔、隆二から手紙来てたぞ。」


「はぁ?今さら何…」



店長は有無を言わさず手紙を押し付けると、店の奥へと戻っていった。


「何?誰から??」


隆二って?

さりげなく広瀬の手元を覗き込む。



「別に。」


広瀬はふいっと私に背を向けて、手紙を乱暴にズボンのポケットに突っ込んだ。

エアメール…


ちらっと見えたアルファベット文字。

外国からの宛先が書かれていた。



「ちょっ………、気になるんですけど。」


「関係ねーだろ。首突っ込んでくんな。」


「…。」


わざとむくれた顔をした。

が、意図も簡単にスルー。


は、反応すらしてもらえない…。




そして帰り道、広瀬の後ろを歩きながら鞄の中を見る。


そこには相変わらず、渡せずにあるプレゼントがあった。


このまませっかく近づいた距離もまた元通りになんのかなぁ…。


知らず知らずの内にため息が漏れる。



すると急に広瀬が振り返った。



「分かりやすくため息なんか…って……」


「え!?な、何?」



広瀬は私の髪の毛を凝視する。

そしてイライラした表情から、一瞬だけ優しい目に変わる。



「…別に。」


あ、きっと髪ゴムだ。

バイトは三角斤を着けてるから、隠れて見えなかったんだと思う。

髪ゴムは貰った日から毎日の様に付けている。



さりげなく、広瀬にアピールしてるつもりだったりして…。

広瀬が、気づく度に優しい目を向けてくれる事があると、最近気づいた。


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