またいつか
ある夕刻。
私は家へ向かって歩いていた。
だけど何故か今日は周りが慌ただしい。
「……?」
疑問に思いながら家のドアを開けた。
「ただいまー」
慌ただしいのは街中だけでは無かった。
「おかえり。あなたも準備なさい!」
「……何してるの?」
部屋には散乱した服。
そして大きな荷物を包んである布。
「逃げるのよ」
「なんで?」
「宗教対立が激しくなったの。じきにここまで戦火が回ってくるわ。だから避難しなきゃ!」
「父さんは?」
「父さんは戦場へ行ったわ」
「……!」
あの噂は本当だった。
母は喋りながらもずっと手を止めなかった。
「逃げるったって逃げる場所なんか無いじゃない!!」
「そうよね……取り敢えずコンスタンティノープルまで行ってみましょうか」