百人殺せば英雄です
気を引き締めなければならないとも思うが、争いたくもなかった。
話し合いになるならば行幸。ならなければ。
「実力行使、よねー……」
そうはならないことを神様に祈り、依子は再び歩き出した。
「ヒィハハッ、よえぇ、よえぇ、よえぇんだよ、クソが!」
陽気ながらも不愉快たる声が耳に入る。
隠れるつもりはなかったが、丁度、木々が生い茂った場所から聞こえたために、そいつから依子の姿は見えないようだった。
「お、お助けぇ」
「うっせぇよ!びーびーぎゃーぎゃー騒ぐなってえの!――って、そりゃ、俺か!ま、いいよねー」