お嬢様、家出しちゃいます!
「やられてしまいましたね、旦那様」
如月はいつの間にか珈琲を作っていた。
「如月、珈琲作ってる暇があるならなぜ僕を助けなかったんだ?」
「何をおっしゃいます。奥様を相手になど、不可能ですよ」
ズズズッ
「あれ、それ僕のじゃない感じ?」
「甘ったれないでください。それくらいご自分でできるでしょう?」
如月はリリアの専属執事だが、任命を受ける前は浩太郎についていた。
浩太郎の扱いは如月が一番よく知っている。
よって、如月は浩太郎を決して甘やかさない。
「この変態クソ執事め!」
浩太郎は悪態をつきながら自分の分を入れた。
「で、どうなさるのですか?このままだと本当に家出なさってしまいますよ?」
如月は早々と諦めていたのでもうどっちでもよかった。
「そりゃ、賛成はできないが、ソフィアがああ言うなら、仕方がないだろう」
ソフィアは若い頃に単身日本にやってきて、自分からは何も言わず浩太郎を支えてきた。
そのソフィアが初めて自分が責任を負うと言った。
浩太郎に拒否する権利はなかった。