お嬢様、家出しちゃいます!
「そこまでにしとけば?」
リリアが目を閉じた瞬間、暗闇の中で声が聞こえた。
それは、とても心地の良い、遠い昔に聞いたことのあるような重低音だった。
「おい、おちび。目ぇ開けんじゃねぇぞ?ついでに耳も塞いどけ!」
リリアは素直に従った。
こんな緊迫した状態で、突然現れた何者かを信じるのも不思議だが、なぜかリリアは抗えなかった。
というよりも、抗いたくなかった。
自分に向けられたこの声に、少しでも応えたい。
どこから湧いてくる感情なのかも分からず、リリアはしばらく大人しく言われたとおりにしていた。