お嬢様、家出しちゃいます!
とんとん
「きゃっ!」
長いような、短いようなよく分からない間、真っ暗で何も聞こえない状態だったため、リリアは思いっきり肩をビクつかせた。
「もういいぞ」
そう耳元で囁かれ、少々むず痒さを感じながら、リリアはゆっくりと目を開け、そっと手を下ろした。
だんだんと暗闇に目が慣れ、1番に見えたものが、見知らぬ男だった。
髪色は、おそらくミルクティ色のようだが、月明かりに照らされて、金色に光っているようだった。
後ろでちょこんとくぐられた髪は、先程の影響で少し乱れている。
黒目が大きいのが印象的な、若干ツリ目気味の瞳に、思わず目が離せないでいた。
薄い唇が、そっと開かれた。
「なぁ、キスしていい?」
「え?」
ちゅっ
それは、触れるか触れないかの軽いものだった。
「~っ!//」
もちろん、リリアお嬢様人生初のキスでございます。